2020年6月3日水曜日

沖大当局に申し入れ書を提出しました(コロナ禍の対応など) 




2020年 6月3日
沖縄大学学長 盛口満 殿
沖縄大学理事長 佐喜真實 殿
申し入れ書
沖縄大学学生自治会

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい社会全体に影響を及ぼしています。沖縄においても多大な影響を及ぼし、琉球新報と沖縄大学地域研究所が行った世論調査(回答総数2456 回答者の98.5%が沖縄県在住)で新型コロナウイルス感染症の流行前と比べて収入が「半分以下に減った」という人が33%に達してます。こうした中で沖縄の学生とその家族も経済的に困窮しています。ある学生団体の調査によると、新型コロナウイルスの影響による保護者や自らの収入減を理由に、大学生の13人に1人が退学の検討しているそうです。
 全国では160を超える大学の学生が署名活動などを通じて自らの大学の学費減免を求めて声を上げています。5月15日には沖縄の学生有志が生活費支援や学費の一律免除・減免など8項目を求める要請文を沖縄県に提出しました。全国で学生が声を上げています。

学費の一律無償化を

 全国学生の声に押され政府が5月19日に「学生支援緊急給付金」を創設しましたが、給付を受けられるのは高等教育を受けている全国の370万学生のうち1割強にすぎません。また、留学生だけ支給にあたっての条件を厳しくするなど差別的な制度でもあります。許せません。沖縄大学当局も政府に抗議するべきです。
 沖大当局も5月26日に「沖縄大学修学支援給付金」を学部生・大学院生全員に支給すると発表しました。しかし、休学した学生には支給しないとしています。休学者へも給付金を支給するべきです。
 政府や大学が給付金の支給を始めていますが、年間で83万円~116万円するな学費の請求がいつも通り行われるなら給付金は学費支払いのわずかな足しにしかなりません。修学支援給付金の支給と一体で学費を一律無償化にすることを要求します。
 「OECDインディケータ2017」によると日本では高等教育における総教育費のうち51%が家計負担で賄われており、OECD諸国中最も家計負担が重いことが報告されています。私立大にいたっては総教育費の80%が家計負担になっています。この比率は2000年代以降、ずっとこのレベルで推移しています。
 大学の授業料は、1975年には国立3万6000円、私立平均18万2677円でしたが、2005年には国立52万8000円、私立平均81万7952円となりました。この30年間の物価上昇率は2倍程度であるのに対し、学費は国立で16倍、私立で約5倍と巨額に膨らむことで、学生とその家族を経済的に圧迫してきました。
 沖縄大学の学費も年間約83万円~116万円と高額です。沖大生とその家族を経済的に苦しめてきた一番の原因は高い学費です。よって、沖縄大学の学費を一律無償化にし、今年度の学費支払いを終えている学生には払い戻しを行うよう求めます。休学費も免除し、すでに支払った学生には払い戻しを行うよう求めます。学費の一律無償化こそ学生への最も確実な経済支援です。
 
政府・文科省に補償を求めよ 

 学費の一律無償化や給付金、その他の支援策にかかる費用は全て政府・文科省に補償を求めることを要求します。
 大学の学費高騰の原因となった「大学改革」は2004年の国立大学法人化から本格的に始まりました。
 現在の大学改革につながる2001年発表の『遠山プラン』では、①国立大の再編統合、②国立大への民間的発想の経営手法の導入、③第三者評価による競争原理を導入、が掲げられました。04年の国立大学法人化以降の運営費交付金の削減と科学研究費の傾斜配分が始まりました。国立大学の収入は運営交付金と学費がメインなので運営交付金が減った分、学費は上がっていきました。
 私立大学も政府からの経常費補助金が減らされ、1980年には29.5%あった補助率が2015年には9.9%まで減少し、施設・設備への補助金も2010年に118億円あったものが2017年には66億円になり、約2分の1にまで減額されています。こうして私立大学も補助金が減った分、学費を上げていきました。沖縄大学も年間の事業活動収入構成比率で76.2%が学生生徒等納付金となっており、学生の学費に高く依存した大学運営になっています(2017年度 事業報告書より)。
 政府・文科省は大学への基本的な補助金を減らす一方、競争的研究費や競争的補助金をつくり、「政府・文科省が喜ぶ研究や大学運営をおこなう大学にだけ予算を増やしますよ」と予算で大学を支配することも始めました。
 13年の『国立大学改革プラン』では、「産学連携の推進」が大学の評価軸であることが鮮明にされています。私立大学においても、「経営の強化」を設立目的に謳うNPO法人「大学経営協会」(U-MA)が設立され、大学への市場原理の導入が促進されていきました。
 「産学連携の推進」「経営力の強化」を推進する大学改革は大学の腐敗を生みだしました。
 2018年に東京医科大学で女子受験生と浪人生を一般入試試験で一律減点し、合格者数を抑えていたことが発覚しました。東京医大はこの差別的な対応について「女性は出産や子育てを機に医師をやめるケースが多い」「大学病院関連の医師を確保するための暗黙の了解。必要悪だ」(大学関係者)と言い放ちました。過労死も起きる過酷な医療現場を変える立場ではなく、過酷な医療現場を放置する病院経営者を支える立場に大学が立ったのです。これが「経営力強化」「産学連携」を進めた大学の成れの果てです。大学改革は、他にも文科省役員子弟の裏口入学や日大アメフト悪質タックル問題など様々な腐敗を生んでいます。
 沖大当局も「大学改革」の本格的開始となった04年の国立大学法人化に足並みを合わせ、05年から4年ごとの中期経営計画を策定し、第4次中期経営計画(2014~2018年)では1年間の事業活動収支差額比率が10%になること(1年間で10%の儲けを出すこと)を目標にすると公然と宣言しています。2014年からは私立大学への競争的補助金の獲得を目的とする経営企画室も設置し、文科省から「私立大学研究ブランディング事業」や「私立大学等経営強化集中支援事業」の選定を受けています。このように政府・文科省の進める大学改革に追従しているのが沖大当局です。
 沖大当局は、大学改革政策に追従し、「予算は学生から取ればいい」「政府・産業界のために大学を運営する」という姿勢はやめるよう要求します。そして、学費の一律無償化やコロナ禍の学生支援にかかる全ての費用を政府・文科省が補償するよう要求するべきです。

学生と教員の自治を認めよ

 沖大当局のコロナ禍の対応は上から方針を押しつけるという点で一環していました。学生は意見を言う機会もなく、ホームページやメールで送られてくる「学生の行動方針」や「ガイドライン」を見ることしかできない状況でした。
 上から方針を押しつける在り方は様々な弊害を生み出しました。「沖縄大学修学支援給付金」を休学している学生には給付しないという決定。サークルは4月1日から現在まで活動禁止にも関わらず、10人以上サークル員が集まらなければ廃部などの厳しい条件があるサークル設立・更新の書類申請の期限を6月22日に設定するなど。
 こうした問題のある沖大当局の対応は、平時から学生の意見を聞かない大学運営によって生み出されたものです。
 沖大では2013年から学則改悪でビラまきが禁止になり同年から学生だけでイベントや集会をするのも禁止になりました。今年1月の沖大学生自治会執行部選挙では286人の学生が投票したにも関わらず沖大当局は選挙の結果を無視し続け、沖大学生自治会を非公認にしています。
 普段から学生の声を聞く姿勢があれば、ずさんな対応があったとしてもすぐに修正されたはずです。少なくとも学生の声を聞いていれば、休学者には学費を貯めるためにアルバイトに専念している学生も多数おり、お金と時間に余裕があるわけではないと理解できたはずです。休学者には給付金を支給しないという対応はしなかったはずです。
 また、沖大当局は、大学改革の徹底を目指す安倍政権が14年に強行した「学校教育法」改悪にいち早く従い、「学部教授会」や「全学教員会議」を、大学運営や教育研究について「審議決定」
する機関から「学長が決定を行うに当たり意見を述べる」だけの機関に変え、教授会の自治も解体しました(15年2月)。「学生自治」や「大学自治」の破壊は大学改革政策の一環として行われいます。
 学生の自由や自治は、大学において最も大切にされるべきものです。学生が学問を探求する上での基礎である言論の自由は必ず保障されるべきです。また、研究室や講義室の中だけで研究を行い、学生が社会や大学の問題に一切関わらないという姿勢は、学問を多くの人々にとって敵対的なものにするか、もしくは机上の空論にしてしまいます。現実社会に目を向け、大学という場の運営やルールについて構成員で対等に議論し、自分たちで大学の規律をつくり、その場の主体になるという姿勢が学問を探求する学生には求められるはずです。
 よって、私たちは学生と教職員の自治を認めるよう要求します。

以下、要求します。

1.学費の一律無償化を

2.休学した学生にも沖縄大学修学支援給付金の支給を

3.遠隔授業への最大限の配慮を
(1)遠隔授業のための通信環境整備に必要な費用を支給するための給付金の支給を
(沖縄大学マルチメディアセンターが紹介している各携帯会社の通信データ量一部無償化制度は各携帯会社で無償化になるデータ量に格差があり、不平等な制度です。この制度を紹介するだけでは不十分です。)
(2)パソコンやWi-Fiの無い学生全員への機材の貸し出し、もしくは購入資金の支給を
(3)遠隔授業に慣れていない学生に使用方法などを丁寧に説明する機会を設けるよう求める
(4)遠隔授業はレポート提出などを中心に簡単な手段を用いること。そしてレポートなどの提出期限を広くとって柔軟に対応すること

4.サークル活動への支援を
(1)サークル・部団体の設立・更新の申請書類提出の締め切り日の延長をすること
(2)サークル・部団体の設立・更新の条件の緩和など柔軟に対応すること
(3)サークル・部団体に新入生への宣伝ができる場を設けること
(4)感染拡大防止の対策をした上でのサークル活動・サークル室の利用を認めること
(5)上記の支援策は、サークル員・部団体の学生と話し合って実行すること
(6)学生の意思に反する決定が行われないようにすること

5.対面授業再開にあたって感染拡大防止対策のための費用を沖大当局が負担すること
(1)学生にマスクの着用を義務付ける場合は、沖大当局が学生全員分のマスクを購入し学生に配ること
(2)その他、学内での感染拡大防止対策に必要な費用は沖大当局が負担すること。

6.学生・教職員の自治を認めること
(1)ビラまき禁止や学生だけのイベント・集会を禁止する沖縄大学学生規則を変え、学生のビラまきや集会の自由を認めること
(2)学生自治会やサークル活動など学生の主体的な活動を積極的に承認すること
(3)今後、全学説明会や団体交渉など沖大当局と学生が交渉できる場を設定すること
(4)教授会自治を認め、「学部教授会」や「全学教員会議」を、大学運営や教育研究について「審議決定」する機関に戻すこと

7.政府・文科省に補償を求めよ
(1)学費一律無償化に必要な費用は政府・文科省に補償するよう求めること
(2)コロナ禍の学生への経済支援や環境整備の費用は政府・文科省に補償を求めること
(4)大学改革政策への協力を直ちにやめること

以上

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